恩田徹先生には、ご自身の足跡をご紹介いただきつつ、高等学校のカリキュラム改善について語っていただきました。学生時代にインドの方から「なぜ、日本人はこんなに豊かなのに、幸せそうでないのか」という言葉を投げかけられたことが原点になっている、というお話はひときわ印象的でした。その後、初任校の塔南高校、教育委員会、前任校の洛陽工業高校、現任校の堀川高校において、様々な形での学校改革に取り組んでこられた経緯をご紹介いただきました。常に学校の最高目標(堀川高校の場合は、「自立する18歳の育成」)に立ち戻って、カリキュラムや組織を問い直すことの重要性をご説明いただきました。
※本講演は、京都大学オープン・コースウェアのサイトに掲載される予定です。
URL:http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/03-faculty-of-education-jp/17-9234001/
以下、学生たちから寄せられたコメントの一部を紹介します。
・堀川高校だけではなく、先生が働いた学校や教育委員会のことも含めて、幅広いテーマについての話を聞けてとても貴重な時間でした。
・「少しお堅い話になるのかな」と覚悟していたので、当時の世相、風潮など面白い話を聞けて良かったです。教育制度が、普段感じることができないながらも常に変化し続けているのだな、ということを改めて考えることのできるお話でした。
・恩田先生が、学部生時代は教職とは全く無縁だったというのに意外性を感じました。いつから教職を志そうが根底にしっかりした何か持っていれば立派な先生になれるのかなと思いました。
・学校全体が最高目標に向かって有機的に連携していく姿勢は非常に重要であると感じた。
・単なる進学校でなく「自分の子供を行かせたい」学校にするという目標がとても現状に合った実用的なものだと思いました。
・僕は高校教師を志望しているのですが、自分の担当教科を教えることが一番大切だと思っていました。ただ、今回のお話を聞いて、受験が終わってその後の人生も役に立つようなことを教え、立派な生徒を育てるためにはどうすればよいかを考えていこうと思いました。
・探究は「楽しんどい」ということを気づかせることが大事という事で、楽しいことだけでなくしんどさも含めて気づくことで探究がより深まるのだと感じた。
・ご講演で何回も出てきた“生徒理解”こそが、あらゆる教育制度・教育に携わる教員が根底に持っておかなければならない考え方であると再認識しました。
・基本は「生徒理解」ということに強く共感を覚えたと共に、現在の自分を省みることとなりました。目の前の生徒が何に関心を持ち、また何に課題を感じているのか、「対話」を通して、“自分で疑問を持つ”姿勢が高校時代に身につくことを目標とされているのだと思いました。
・「生徒を自立した18歳に育てたい」という情熱のもとに、そのための取り組み自体が目的化しないように、制度改革を続ける先生の姿勢に感激しました。
・今日の講演を聞かせていただく中で、「本当に必要な学びは何だろう?」「それはどうやって作っていくのか?」という本質的な部分を常に大事に考えていくことに大切さをひしひしと感じました。
・目的を達成するための方策や概念が自己目的化したり、独り歩きしてしまうというのは私も共感します。「今やっていることに疑問を持つ」というのは、今、自分たちの取り組みの方向がぶれていないか、自己目的化していないかを絶えず確認するという意味でもあるのだなとわかりました。
・繰り返しおっしゃられていた「今やっていることに疑問を持て」というのはカリキュラムマネジメントのみならず、何事にも通じる大切な視点であると感じました。
・教育には完成形がないことが難しいとこれでも面白いところでもあると思うのですが、常に現状に満足せずに教育を変えていく精神が必要です。
・「今やっていることに疑問をもつ」というのは、常に(頭を真っ白にせずに)考える、しんどいけど考えつづける、ということと一致するし、生徒にやってほしいこととも一致するのだと思いました。教員になりたいという気持ちがなぜか今回のお話で高まってしまいました。
・考えて解決策を思いつく人はいくらでもいるが、それを実行に移すパワー、他人にさせるパワーを持った人はそうはいないと思っており、今回のご講演において、そのパワーがひしひしと伝わってきました。
教育にかける情熱とパワー、そして冷静に状況を見定め、方針を創る確かな判断力の重要性が伝わってくるお話であったことが、学生たちのコメントからもうかがわれます。ご講演くださった恩田先生に、心から感謝申し上げます。
(西岡加名恵)