農業を知り、農学を学ぶココロを養いたい
農業は作物、畜産物を人間に食料として供給してきました。また、農学は農業を科学的に研究してたくさんの技術を開発してきました。科学は真理を追究します。真理を追究しはじめた科学者は、例えば、イネとダイコンの違い、京都と富山の気候の違い、東京と京都の土壌の違い、などの細かい違いをどんどん切り捨て、土壌や作物の根源的な性質を調べるようになりました。
しかし、農業は、作物種、品種、気候、土壌、ヒト、これらすべての細かい因子が統合されてできあがるものですから、それぞれを別々にいくら詳しく研究しても、それぞれの研究成果を統合する努力をしなければ新しい農業の姿は見えてきません。
農学は新しい知識を農業に生かす、すなわち、私たちの生きていく環境をよいものに保ち、十分な食料を生産し、「食料を生産する人も消費する人も幸せになること」に役立つ学問であるべきでしょう。農業と農学の乖離(かいり)をすこしでも縮めるため、植物科学の最先端に携わる研究者や学生が直接農業に接しお百姓さんと話をする「場」が必要なのではないかと考えました。
そこで農学部に圃場(ほじょう)を開設し、南区吉祥院のお百姓さん石割照久さんに指導をお願いすることにしました。ここでは石割さんの指導のもと、遺伝子工学や培養細胞を扱っている学生たちが、消費者に喜んでもらえる野菜を実際に栽培する実習を行っています。
京都には京都の農業があり、京都の生産者が京野菜を始めいろいろな野菜を栽培しています。その技に直接触れることで農学を学ぶココロを養いたいと考えています。